イースタンの人生謳歌

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2007年 12月 13日

特別な定食。






北海道へ来て10年通ってる定食屋さんがあります。
小上がり一卓とカウンターだけの小さいお店で
前の会社の先輩に教えてもらったお店なのですが、
おじさんとおばさんの夫婦2人でやってる和食定食屋さんで、とにかく美味しいんです。
たいてい小鉢が2個くらいついてくるのが一人暮らしにはなんとも嬉しく
月2回くらいのペースで10年間通い続けてました。

おじさんは寡黙で黙々と料理を作り、おばさんは愛想が良く
ギリギリ暖簾が降りた後でも入れてくれたりして、よくサービスしてくれました。

しかし今年に入ってからお店に行ってみると定休日でもないのに
シャッターが閉まっていてその後何度も行ってもシャッターは閉まったままでした。

そして春頃に店の前を車で通るとシャッターに張り紙がしてありました。

「店主病気療養中につきしばらく休業します」

とりあえずこの時までは休業なのか閉店なのかも分からなかったので
とりあえず休業だということが分かって安心しました。

しかし夏になってもシャッターが開くことは無く少し心配してました。

そして秋になりお店の前を通ると何やら張り紙が変わってました

そこには・・・・


「店主妻、長期の看病の甲斐なく○月○日に他界致しました。
              (中略)
 11月頃には店を再開致しますので宜しくお願い致します」

と書いてありました・・・

しばらくビックリして車の中で放心状態でした。
店開いてた頃は全く病気の雰囲気など無く元気だったのでショックでした。

しかしどうこう出来るワケでもなく
ただただ待つのみでした。

そして今日ついに再開後初めて行ってきました。
先月から再開してたことは知ってたんですが
自宅が店から遠い場所に引っ越したこともあってなかなか行けないでいました。

ちょっと感慨深くて入るのにたじろぎましたがほぼ1年ぶりに暖簾をくぐると・・・

まずビックリしたのはおじさん一人でやっていることでした。
勝手にバイトさんでも一人入れてるんだろうなーと想像してたんですが
今まで二人でやってた作業を一人でやってるようです・・・
そしておじさん・・・・明らかに痩せてました・・・・以前はガッチリしてる方だったのに・・・

席に着くと今までおばさんの仕事だったお茶出しをおじさんがしてくれて、唐突に

「再開してから初めてですか?」

と話しかけてきました。
10年間おばさんとは何回か話しましたが、おじさんはいつも料理を作っているので
おじさんとちゃんと話したのは初めてだったかもしれません。

そんなおじさんに急に話しかけられ、しどろもどろで「はい」と答えると
おじさんは丁寧に
「再開しましたんでまたよろしくね」
と話しかけてくれました。
10年通っていたとはいえ特に僕のほうから話しかけることもあまりなかったので
よくおじさんおばさんと会話してた常連さんとかに比べると印象も薄かったと思ってたのですが、
1年ぶりに来た僕のことを覚えていてくれました。

それがまず嬉しくて思わず「再開してくれて嬉しいです」と言いました。
おばさんの事については何と言っていいか分からず何も言えませんでした。

そして発注

今までおばさんがやってたご飯盛りや、小鉢の盛りもおじさん一人でやるので
多少時間がかかりましたが料理が出てきました。

それは1年前までと何ら変わらず小鉢もしっかり2個付いて来ました・・・。

最近年のせいか涙もろい僕はそれを見ただけでぐっと来てしまいました。
おじさんは一人になっても今まで通りのままで料理を出してくれているのです。
今まで二人でやってたんですからその労力たるや大変でしょうに・・・。

そして1年ぶりの定食を頂きました・・・・・


何でしょう
料理を食べてここまで感動と同時に感慨深くなったのは初めてでしたね・・・。
正直途中からちゃんと味わってなかったかもしれませんね。
でもやっぱり・・・・・・おいしかった
本当においしかった。

嬉しく、重い定食でした。

そして食べてる途中に気づいたのですがレジの横におばさんの写真がありました。
ちょうどおばさんのカウンター内の定位置がそこだったので
もう何とも言えない気持ちになってしまいました。

食べ終わってレジ横に立ち10年で初めておじさんにお金を渡しました・・・
(レジ担当はおばさんでした)
するとおじさんが

「一人でやるから色々迷惑かけるだろうけどまたよろしくね」

と話しかけてくれました。
10年でおじさんとこんなに話したことは無かったので
もう泣きたくなるのをこらえて「頑張ってください」と言うのがやっとでした。
そしておばさんの写真に一瞬両手を合わせて店を後にしました。

車に乗り込むと我慢出来なくなって少し泣いてしまいました。
もう三十路近いとダメですね・・・・涙もろくて。

単身で北海道に来た自分にとってこの定食屋は
唯一家庭料理が食べれるお店でした。
ただの行きつけのお店ですが
無くなってから分かる身近な存在の大きさって何か悲しいですね・・・。


本当一生でも記憶に残る今日の夜ゴハンでした・・・


でも次回からはもう今まで通りの感じで行けそうです。

by gunmic | 2007-12-13 00:00


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